第56回 常総きぬ川花火大会・花火写真コンテスト
開 催 日:令和5年10月28日(土)
応募者数:51名
応募点数:97点
審 査 員:小野里公成[花火写真家]
講 評
2019年以来のコンテストとなりました。今回も多くの応募作品を拝見でき、まことに嬉しく思います。
当日の風はメイン側がかろうじての順風で、朝方の雨の影響もあったのか湿度もあり、コンディション的には最高というわけではありませんでした。ワイド系だけでなく、スターマイン連発でも煙が溜まり気味で、すっきりした絵作りは困難でしたが、どの作品もそれを感じさせない仕上がりでした。
今回はメイン会場やカメラ席近辺からの応募が多かったようです。こうした撮影場所では最低限の構図が保証されている反面、全員が同じ位置からの撮影なのでどう撮影者らしさ、個性、切り取り方、露出、そうした部分でオリジナリティを出せるかが鍵であり、同じ区画で観覧する私もそこに注目して選ばせていただきました。
選考過程で多く目についたのは、現像時に理想を追い求めてか、全体の明度を平均化してしまいがちという作品です。データとしての見た目を良くする、整えるのは現像時に気を使う部分ですが、重要なのは撮影時、観覧時の撮影者の実感としての印象を再現することです。暗いところはそのように、オーバー気味になったところはそれなりに、眩しく感じた部分は眩しく、と、もし花火も観覧客も情景も全てが同じ明るさで描写されてしまえば一見綺麗だけれど明度のメリハリやパワーがなく、暗い場所で明るい花火を見ている感、が薄れてしまいます。同時にその加減が難しいとも言えます。デジタル世代の若い作者の応募も増えて、今後の花火写真の有り様について新しい表現が生まれる可能性と期待を感じる作品選考になりました。
大賞
茨城県知事賞
二葉 優(葛飾区)
寸評
花火部分は発色もご自身のタイトルどおり忠実に描写されています。星打ちが途切れたことが惜しいのと、構図としては若干もう少し下に振った方が良いと思われましたが、全体の押しの強さが頭一つ秀でていました。さらなる完成度を目指されてください。
特選
茨城県議会議長賞
稲葉 龍心(太宰府市)
寸評
大賞と争った作品です。フレーミング、タイミングとも申し分のない作品です。花火部分が若干アンダーで弱いですが野村ブルーをまず良く描写されています。輝度の高い部分を抑えて現像されたか絞り込んでの撮影か、調子が均一で青一色なだけに綺麗に圧倒というインパクトがもうひとつだったと感じます。
準特選
茨城県営業戦略部長賞
八田 淳(松戸市)
寸評
きっちりとフレーミングされた中に表題どおりにまさに開幕スターマインを捉えた瞬間はまだ薄暮を残しての描写となり、早い時間つまり大会の始まりと、これからどんな花火が上がるのだろうというワクワク感が感じられます。
準特選
茨城県観光物産協会長賞
坂本 純一(鴻巣市)
寸評
用紙に対してベストなフレーミングで収まり、私の考える花火写真の王道という感じです。上空の割物群の銀(白)が作者タイトル「輝き」というには若干眩しさが足りなかったかと。
入選
常総市長賞
澁谷 央和(川口市)
寸評
縦長の画角と用紙を活かし会場全体の雰囲気を取り入れた作品です。この瞬間の花火をオーバーにせず撮れたとしたら私的には花火までの全景が花火に自然に照らされたものよりやや明る過ぎと感じました。
常総市議会議長賞
鈴木 孝明(静岡市)
寸評
花火の色合いはよく捉えられています。構図的に花火がセンターに来ていないのと、やはり全景が微妙に視点を分散させています。屋根の半分くらいまで入れて、もうひとまわり花火に寄せるとベストだったでしょう。
常総市教育委員会教育長賞
板垣 秀星(港区)
寸評
星打ちの途切れが惜しいと思いましたが良い瞬間です。若干アンダーなのと、迫力は感じますが少し窮屈な構図なのでもう少し引いた方がベストかと思います。
常総市観光物産協会長賞
三和田 恵(府中市)
寸評
この瞬間を捉えた作品では総合的に一番良かったと思います。大玉の曲導が途切れたのが惜しかったです。
常総きぬ川花火大会会長賞
中村 廣勝(吉川市)
寸評
横位置構図で真ん中に花火だけだとこぢんまりとしてしまいますが、この作品では左右に放たれた豪快な星打ちが画面を満たして、横構図に相応しい作品になりました。花火全体や情景の描写も適切で、ダイナミックな画面になっています。
佳作
内藤 博之(八王子市)
寸評
露出の難しい和火を上手に描写しています。花火全体をこれだけ見えるようにすると、背後の空や客席のあたりももう少し明るくなるはずですが、そのように処理してもその方が良かったと思います。
木村 翼(藤岡市)
寸評
フレーミング、花火のタイミングともに申し分のない作品です。惜しいことにこれは花火も情景も背後の夜空も明る過ぎてメリハリが足らなかったと思います。
鈴木 盛厚(幸手市)
寸評
横長の構図と広角の画角ならではのフレーミングで、花火そのものの描写は発色とも良好です。表題の「囲む」の割には周りの情景の描出が少々賑わい不足でした。つまりは広く暗い画面に小さな花火群となって大会の臨場感や客席の熱感がいまひとつでした。
高橋 賢司(さいたま市)
寸評
縦長の構図を活かして画面のまとまりは十分な作品です。全体に花火も前景も明るめなので、ブルーワールド感が薄れてしまったと思います。
平良 優大(朝霞市)
寸評
目の前にあると写したくなる物ですが、本来花火の引き立て役である前景の夜店の主張の方が強くなったことが惜しまれます。あきらかに花火より先に目が行ってしまうので、屋根の半分くらいまで切って花火全体にフレーミングしても良かったのではないでしょうか。