コンテスト

第54回 常総きぬ川花火大会・花火写真コンテスト

開 催 日:2018年8月11日(土)
応募締切:2018年9月14日(金)
応募者数:75名
応募点数:136点
審 査 員:小野里公成[花火写真家]

講 評

今回も多くの力作のご応募ありがとうございました。湿度の高い感じの開催日の晩でしたが、今夏は各地で猛暑に加えて痛ましい災害が多発しました。その中で常総市で滞りなく花火大会が開催されたことは幸いと感じます。
私が選考した作品においてはいずれも撮影、現像、プリントと作品作りの工程が丁寧に仕上げられており、完成度の高いものばかりでした。それだけに僅差の優劣を見いだすことがかなり困難でした。
デジタル全盛、そしてSNS全盛の時代に花火写真にも傾向が見映え重視の「極彩色」系の作品も見られますが、真を写したそれではないはずです。長らく花火を見て撮影している選者には、現実にあり得ない超絶な色彩として目に映り、「本当にこんな色に見えていたのか?」と「いいね」と言えないのです。本来の花火の発色を気にしてほしいと思います。流れてゆくシーン同士を重ねるか、単独で撮るか。玉の種類を実際の打ち上げでは混在していないのを混ぜるのか。露光のタイミングや合成の具合。それは好みの問題と同時に結果として「効果的か」どうかだと思い、私はその点を審査ポイントのひとつとしています。
それぞれの作品に思うのは、「数在る打ち上げの中でなぜこのシーンを応募したのか?」「これがこの作者の最良最高のワンカットなのか?」「打ち上げられた全ての花火の中で最高の一瞬だったのか?」ということです。また、あえて現像が難しいシーンを応募してきたな、と驚くこともあります。応募者にとって価値ある一瞬をとらえた作品を身の引き締まる想いで、審査させていただきました。

大賞

茨城県知事賞

「常総夏夜のにぎわい」

井上 弘喜(久喜市)

寸評

前後のシーンが一体となり、画面への納まりも良くまとまっていると思います。なによりも右上の玉の現像は難しいところなので全体をバランスよく抽出しています。また画面下部の観客や会場の様子もほどよく会場の雰囲気を盛り上げています。

特選

茨城県議会議長賞

「涼花」

長山 広治(日立市)

寸評

まさに涼やかな一枚となりました。ワイド系はこちら側ではハスになりますが縦位置構図的には納まりが良いと感じます。鬼怒川への映り込みはもちろんですが豊水橋のディテールがきちんと描写されて画面を引き締め、花火を引き立てている点がより秀でていると思いました。

準特選

茨城県営業戦略部長賞

「光彩陸離」

宮口 弘志(柏市)

寸評

多数の玉が混在し、にぎやかで華やかな仕上がりです。画面下部の星打ちが橋のシルエットと川面への反映の両方を効かせています。

準特選

茨城県観光物産協会長賞

「青の星彩」

桑島 奨(世田谷区)

寸評

綺麗です。花火写真としては八方咲と丸く開く牡丹系を混在させているのでそれぞれのフォルムが活きていません。花火作家が混在させて打ち上げないのはそのためだと思います。その是非はともかく野村花火の青の世界が倍重ねで構築されたのは花火ファン的には魅惑的と感じました。前景ともうまく収まっていると思います。

入選

常総市長賞

「色彩美」

木村 翼(藤岡市)

寸評

素晴らしいワンシーンです。惜しむらくは、発色が実際の花火の色を超えて派手目だと感じました。あと打ち上げ空間全体が右寄りになっていますので下部の曲打ちの左側が若干切れてももう少し左寄りにプリントしたいところです。

常総市議会議長賞

「光の王宮」

中村 廣勝(越谷市)

寸評

いくつかのシーンがまとまり、華やかな作品になりました。用紙画面への納め方も適切と思います。若干アンダー目かまたはもやの影響でしょうか全体にもう少しはっきり明るく出ていたらと思います。

常総市教育委員会教育長賞

「美しき常総華火」

大島 正美(横浜市)

寸評

縦位置の切り方も適切で手慣れたところ、バランスよく用紙に納めています。大胆で迫力ある作品です。発色的にはややオレンジが赤く、緑が蒼っぽくなってしまいましたが、観客席の描写が臨場感とスケール感を出しています。

常総市観光物産協会長賞

「夜空に桜舞う」

秋元 拓也(平塚市)

寸評

観客の様子も効果的に入り、常総の春のシーンが美しく収まりました。桜の発色は若干アンダー目と見ます。35ミリの比率でなく、用紙比率という構図で考えると若干上と左右の空きが気になりますか。そのためややこぢんまりと見えています。

常総きぬ川花火大会会長賞

「輝く光のショータイム」

齋藤 将(静岡市)

寸評

花火の写りはとても良いと思います。下部に少しだけ入っている物販のテント群は、入った方がいいのかどうか微妙な存在?そのことで花火が若干遠ざかって全体に静かでおとなしく感じます。むしろここは手前は切ってもう一段花火に寄った構図だと縦位置だけにダイナミックだったと思います。

佳作

「きぬ川真夏の夜の彩り」

浅間 純一(船橋市)

寸評

ダイナミックに切り取っていますが右上の玉は切れずに入れたいところです。この玉や画面中央の小花群が本来の紫系でなくピンク寄りになってしまったことが惜しまれます。

「青い花炎」

本沢 幸夫(川口市)

寸評

用紙いっぱいに合わせた大変力強く爽やかな作品です。左側を空けてもう少し右寄りにプリントしたいのと、「花火だけ」になってしまい場所的要素やスケールの比較要素が欲しいところです。

「静寂のあかり」

古川 靖史(朝霞市)

寸評

絶妙のタイミングでした。もやった大気で背景が白っぽくなるのを抑えたのかもしれませんが、若干ですが、銀冠がアンダーに感じるのと銀冠の上が少し切れても観客の部分をもう少し入れて花火の射出位置を上げた方が良かったかと感じます。

「朧」

八田 淳(松戸市)

寸評

ダイナミックな作品で細部まで見事にとらえています。これは寄り過ぎたというか、天が詰まってしまったところが惜しいです。描写の弱い画面下部をカットして少し下寄りにプリントすると良いのでは。

「色彩のコンチェルト」

八田 和香(松戸市)

寸評

現像の難しいシーンをよく作品にされたと感嘆します。適切な露光で各色綺麗ですが、画面全体としては構成する花火要素が複雑な分、おぼろげで弱い感じがします。